「島からの“受診”をあきらめないために――甑島から鹿児島市への付き添い支援」

鹿児島県薩摩川内市の西方、東シナ海に浮かぶ甑島(こしきしま)。美しい海と豊かな自然に囲まれたこの島で暮らす人々にとって、専門的な医療を受けるというのは「遠く離れた本土へ渡る」という、ある意味で小さな冒険だと思います。

今日、その冒険の一歩を支えるお手伝いをさせていただきました。


目次

フェリー2時間半+車で1時間15分の長旅

ご依頼をいただいたのは、甑島から鹿児島市の病院へ「手術前の検査入院」をされる方の送迎・付き添い。

朝7時台に島を出発され、約2時間半のフェリー移動を経て、串木野新港に到着。そこから鹿児島市内の病院まで、さらに車で1時間15分の移動。到着する頃には、午前11時を過ぎていました。

船に乗るだけでも体力を消耗しますが、その後の陸路の移動も長距離で、一般の方でもかなりの負担です。

ご本人は視力がかなり低下しており、右半身の麻痺もある方でした。段差や揺れにも敏感で、乗車中は緊張した面持ちでシートに身を預けていらっしゃいました。


「どこまで付き添ってくれるの?」という不安に応えるために

こうした長距離の外出では、単に目的地に送り届けるだけでは不十分です。

今回も、フェリーターミナルでの合流から、車両への乗降介助、病院受付へのご案内、そしてトイレ介助(ズボンの上げ下ろしや拭き取りまで)など、いくつもの小さなステップを丁寧にサポートさせていただきました。

途中、こんな言葉をかけられました。

「島には眼科もないしね。本当は行かなきゃと思ってたけど、見えづらいし、足も動かないし、なかなか行く気になれなかったのよ」

島で暮らす方にとっては、「病院に行く」という選択そのものが、日常から大きく逸脱した“挑戦”なのです。


「誰かがいれば行けるかも」その希望をつなぐ存在に

今回のお手伝いが特別だったのは、ご本人だけの話ではありません。甑島という地域においても、大きな意味があったのではないかと思います。

島には、まだ見ぬ“行きたくても行けない”誰かがいると思います。

付き添ってくれる人がいれば、「私も行けるかもしれない」と一歩踏み出せる人がいるかもしれません。

フェリーに一緒に乗って、港で待っていてくれる人がいて、病院まで寄り添う。

その安心感は、地理的な距離以上に、心理的な距離をぐっと縮めてくれるのだと、今回のサポートで実感しました。


外出は「生活」を取り戻す行為

視力の回復は、生活の質そのものを大きく向上させます。

「外の風景が見えるようになった」
「自分の腕時計の文字盤がくっきり読めた」
「昔よく通った食堂を見つけて、懐かしくなった」

そんな小さな発見の一つひとつが、ご本人の表情をみるみる明るくしていきます。

たとえ一時的な入院や処置であっても、そこで得た“変化”や“喜び”は、日常の中に彩りを取り戻す大きなきっかけになることでしょう。


福祉タクシーむすびの役割とは

「福祉タクシーむすび」が大切にしているのは、ただの送迎ではありません。

  • 港での合流や見送り
  • 目的地までの長距離移動のサポート
  • トイレや服薬など、個別の介助
  • ご本人とご家族の不安軽減
  • 病院や支援者との情報共有

こうした一つひとつの“つなぎ目”を丁寧に結ぶことが、サービスの本質だと考えています。

誰かの支えがあれば、一人では難しかった外出も実現できる。
「行けない」を「行けた」に変える、そのサポートをこれからも続けていきたいと思います。


離島医療のハードルを越えていくために

今後、人口減少や高齢化がさらに進む中で、離島や中山間地域での“医療アクセス格差”は深刻さを増していきます。

そんな中で、民間の福祉タクシーが担える役割は、これまで以上に大きくなっていくと思います。

医療を「受けられるかどうか」は、その人の“生き方の選択肢”に直結します。
だからこそ、誰もが安心して医療や生活にアクセスできるような仕組みをつくることが大切です。


最後に ― 甑島からの贈りもの

今回、甑島から来られた方のサポートを通じて、改めて気づいたことがあります。

それは、サポートをしているつもりの自分自身が、多くの学びや感動をいただいているということです。

フェリーを降りて、はるばる病院に向かう姿。
不安な表情が、少しずつ安心と笑顔に変わっていく瞬間。
「ありがとう」と握り返してくれた手の温かさ。

その一つひとつが、自分の原動力になっています。


ご相談・ご予約はお気軽にどうぞ

福祉タクシーむすびでは、甑島をはじめとした離島からの受診・入退院付き添いも対応しております。
事前の調整やフェリー到着時間に合わせた送迎など、個別のご希望に合わせて柔軟に対応いたします。

一歩踏み出す勇気を、そっと支えられる存在でありたい。
福祉タクシーむすびは、これからもそんな“結び”を大切に活動してまいります。

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