退院後の自由と自分らしさを支える

退院後の自由と自分らしさを支える

退院後の生活は、単なる「治療の延長」ではありません。そこには、自分らしく生きるための選択と、生活の再スタートがあります。この記事では、退院された方と接する中で感じた「自由」と「自分らしさ」を支えることの大切さについて綴ります。

1. 退院後の一歩、その人が選んだ場所

1.1 病院から最初に向かったのはコンビニ

退院された方をお迎えし、まず向かった先はコンビニでした。コンビニの店内をゆっくり歩きながら、「やっぱりコンビニはいいね。ちょっと高いけど何でもある」と笑顔で話された姿がとても印象的でした。入院中に制限されていた日常の感覚が、ようやく戻ってきたような瞬間。コンビニはただの買い物場所ではなく、自由を象徴する“自分の居場所”だったのかもしれません。

1.2 お酒とたばこが意味する“自分らしさ”

その方が手に取ったのは、お酒とたばこ。健康に良いとは言えない選択かもしれませんが、「これがあってこそ自分の時間が戻ってきた」とでも言うような、安堵した表情がありました。支援者として、すぐに「健康に悪い」と止めるよりも、その選択の背景にある「その人らしさ」に目を向けたい。日常に戻ること=自由の回復であり、その一歩を尊重することが大切だと感じました。

2. 「不健康」と「自由」は対立するのか?

2.1 管理された生活と感情のバランス

入院中の生活は、定時の食事・服薬・安静という“健康最優先”の管理体制です。それは命を守るために必要不可欠なものでした。しかし、退院後に戻る生活は、もっと複雑で人間的です。健康を維持することと同じくらい、自分の好きなものを選び、日々に彩りを感じる自由もまた、重要な価値です。どちらか一方に偏るのではなく、バランスを取りながら支えていく姿勢が求められます。

2.2 医療の外にある“生活の質”

退院後の生活には、病院では測れない「QOL(生活の質)」があります。「体には悪い」と分かっていても、心が満たされる時間を大切にしたい。例えば、好きな音楽を聞く、たばこを一服する、缶ビールを片手にテレビを観る――それが生きるモチベーションになっている人もいるのです。支援とは、そうした“人間らしさ”に寄り添うことでもあると感じます。

3. 支援者に求められるまなざし

3.1 健康だけでは測れない「その人らしさ」

健康志向が高まる現代ですが、すべての人が“正しい生活”を望んでいるとは限りません。誰かにとっては、「好きなものを楽しむ」「不完全でも自分らしく過ごす」ことのほうが、ずっと大切かもしれません。支援者がその価値観を認められるかどうかで、信頼関係は大きく変わります。

3.2 支える側が持ちたい柔軟性と尊重

支援とは、相手の選択を尊重すること。安全を守りながらも、なるべくその人の“やりたい”を叶えられるように工夫する姿勢が必要です。ときにそれは、タバコ1本を咎めるより、「どうすれば安全に吸えるか」を一緒に考えることかもしれません。支援とは、正しさを押しつけることではなく、共に歩むことだと感じます。

まとめ

退院支援は、医療の範囲を超えて「その人の人生をどう支えるか」に目を向ける必要があります。完全な健康よりも、少し不完全でも自分らしく過ごせる暮らし。その人らしい選択を認め、自由と安心が共存する生活をサポートしていくことが、これからの退院支援の在り方ではないでしょうか。

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