雨の日のお出かけも、心を潤す時間に

■福祉タクシーだからこそ叶えられる、やさしい外出支援のかたち

「雨のお出かけも好きなんです」
この言葉に、僕はちょっと驚きました。
その日、空はどんよりと曇り、しとしとと静かな雨が降っていました。
本来であれば先週に予定されていたお出かけ――体調不良のために延期となり、ようやく迎えた日がまさかの雨。
「残念ですね…」と声をかけようとした僕に、利用者の方がやさしい笑顔で返してくれた言葉が、それでした。


■ 雨の日の外出は、ちょっと特別

梅雨の雨は、湿度も高く、視界も悪く、移動には気をつかいます。
特に車椅子での移動となると、事前の準備や配慮がより一層必要になります。

この日も、天候に備えてあらかじめ用意していた車椅子用のレインコートをご利用いただきました。
着用をお手伝いし、雨に濡れないようタオルも準備して出発。
目的地は、車で10分ほどのところにある道の駅の物産館。
お孫さんへのプレゼントを選びたいというご希望を事前に伺っていたため、できるだけ品ぞろえが豊富で、ゆっくり見て回れる場所を選びました。


■ 車窓からの風景に、想いがあふれる

車中では、雨粒がすべる窓の外を、じっと見つめていらっしゃいました。
ときおり道ばたの紫陽花が視界に入るたびに、「きれいねぇ」と静かに笑みを浮かべて。
「こうやってお花を見るの、久しぶり」
そうおっしゃって、ハンカチで目元をそっと押さえる姿に、こちらまで胸があたたかくなりました。

「雨=憂鬱」だと思っていた僕の中のイメージが、少しずつ溶けていくのを感じました。
雨の日には雨の日の、独特の静けさと、色彩の深さがあります。
紫陽花の鮮やかさや、濡れた葉のきらめきが、心にしみるような時間を作ってくれるのです。


■ 選ぶ時間は、「その人らしさ」の表れ

物産館では、お孫さんへの贈り物を一緒に選びました。
お目当ては、何か“かわいらしいもの”。
パッチワークの布小物や手作りのキーホルダーを、一つひとつ手に取りながら、「これが似合いそうね」「これはちょっと派手かな」と笑顔で悩まれていました。
最終的に選ばれたのは、色とりどりのキーホルダー3つ。
どれもそれぞれ違うお孫さんの顔を思い浮かべながら、丁寧に選んだものでした。

この“選ぶ時間”こそが、その方にとっての大切なひとときなのだと、あらためて感じました。
ただ買い物をする、という行為ではなく、想いを込めて、心を動かして、誰かを思いやる時間。
そのそばで一緒に悩み、一緒に喜びながら過ごせることは、福祉タクシーとしてとってもかけがえのない経験です。


■ 外出先でも、そっと寄り添う

「送迎」と聞くと、ただ目的地まで運ぶだけのイメージを持たれるかもしれません。
しかし「福祉タクシーむすび」が大切にしているのは、“移動”のその先にある“心の時間”です。

外出中の付き添いや見守り、買い物の相談や手続きのサポート、重い荷物の持ち運び、トイレの場所案内など――
ちょっとしたことのひとつひとつが、その方の「自分らしく過ごすこと」につながります。

何を買うか、どこに行くか、誰と過ごすか。
それを“自分で決める”というプロセスに、そっと寄り添い、ともに動く。
この自己決定を大事にする関わり方が、心の安心と笑顔につながっていくのです。


■ 雨の日に、心が晴れる時間を

帰り道。
購入したキーホルダーを膝にのせて、そっと撫でるように触れていらっしゃいました。
「今日は、本当に来てよかった」
そう言ってくださった言葉が、何よりのご褒美でした。

福祉タクシーは、ただの交通手段ではありません。
行きたい場所へ行くだけでなく、「一緒に行く」ことの大切さを実感する手段です。
たとえ雨の日でも、心が晴れるような外出ができる。
それを実現するのが、僕の役割なのだと思っています。


■ 最後に――誰かの一歩を、これからも支え続けたい

「雨のお出かけも、好きなんです」
この言葉が、僕の心にも残り続けています。
季節の移ろいを感じる時間、誰かを想う時間、そして自分らしくいられる時間。
それを支える小さな一歩を、これからも積み重ねていきたい。

福祉タクシーむすびでは、送迎だけでなく、外出先での付き添いやお買い物、イベントの同行など、柔軟なサポートを提供しています。
天気や体調に合わせたきめ細やかな対応も行っていますので、「こんなことお願いできるかな?」ということも、どうぞお気軽にご相談ください。

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