「明日は受診日、付き添いをお願いします」と、いつものケアマネジャーさんからのご依頼。
ご利用者様はアルツハイマー型認知症を患っておられますが、最近は感情の起伏が激しく、ケアマネさんにも手をあげそうになる場面があったとのこと。
そのお話を聞き、少し緊張感をもってお迎えに向かいました。
■ 国道を一人で歩く姿を発見
ご自宅へ向かう道中、ふと目に入ったのは――国道3号線を、一人で歩くご本人の姿。
慌てて車を停め、声をかけると、
「どこに行こうとしたんだっけな…」と困ったような表情で立ち止まられました。
目的があやふやになってしまうのも、認知症の特徴のひとつ。
「今日は病院に行く日ですよ」とお伝えすると、「そうだったね」とすぐに頷いてくださり、車に乗ってくださいました。
このような“偶然”は、きっと偶然ではなく、少しでも早くつながれて良かった…と心から思いました。
■ 受診で見えた、ご本人の状態と薬の管理
病院では、ケアマネさんから伺っていた情報を医師へ丁寧にお伝えしました。
「最近怒りっぽい」「手をあげるようなそぶりがある」といった変化を共有することで、医師の診察もより具体的に進めていただくことができました。
診察の結果、内服薬が1種類追加されました。
ご自宅に戻ってからは、内服管理カレンダーに新しい薬を組み入れる作業を一緒に行い、
これまでの残薬(およそ10日分)も確認。
飲み忘れが重なっていたことがわかり、継続して服薬する難しさを改めて感じました。
■ 「靴がボロになったんだよ」――買い物にも寄り道
受診を終えた帰り道。
ご本人から「靴がもうボロボロでね。ニシムタに行っていい?」と、はっきりとしたリクエスト。
買い物に行きたいという意思がしっかりとあることは、とても大切な「自分らしさ」の表れです。
すぐにニシムタへ向かいました。
売り場では、「この靴は柔らかい」「これは滑りそう」などと丁寧に選ばれ、最終的にご本人の納得のいく一足を購入されました。
■ 支援とは、“気づき”と“柔軟さ”の積み重ね
今回のように、
・道に迷っていた方を安全に受診へつなぐこと
・医療者と連携し、服薬管理まで行うこと
・そして「買い物に行きたい」という気持ちに応えること
すべてが、「その方らしい生活」を支えるための一歩だと感じています。
決してマニュアル通りにはいかない毎日ですが、だからこそ、観察・傾聴・連携・柔軟性が問われるのがこの仕事の面白さでもあります。
最後に
福祉タクシーむすびでは、送迎だけでなく、病院付き添いや買い物サポート、日常のちょっとした不安への寄り添いも大切にしています。
「ただの移動」ではない「生き方を支える移動」を。
これからも、一人ひとりに合った支援を心がけていきます。