たった2時間の一時外出。でも、その時間が“生活”を支える

「入院中ですが、一時外出を利用してお願いできますか?」
そんなご連絡をいただいたのは、ある晴れた日でした。

お話を伺うと、本来は数日の入院予定だったものの、検査結果が思わしくなく、入院が長期化してしまったとのこと。
今回は、病院の許可を得て2時間だけの一時外出となり、その間にいくつもの用事をこなしたいとのご希望でした。


目次

■ 限られた2時間に、詰め込まれた“生活”

最初に向かったのは、ご自宅。
玄関のドアを開けると、飼い猫が「待ってました」と言わんばかりに出迎えてくれました。

【1】ご自宅で飼われている猫のエサやり。
【2】ポストにたまった郵便物の確認と仕分け。
【3】入院中のご両親に代わって、病院代の支払いと日用品の届け出。
【4】入院中に必要な衣類や小物の買い足し。
【5】電気代、携帯代などの生活費支払い。

次から次へと移動と用事が続き、時折呼吸が乱れ、フラつかれる場面もあったため、途中からは車椅子に乗っていただきました。

けれど、そのひとつひとつの行動に、「生活を自分の手で整えたい」という意志が強く感じられました。


■ 一時外出とは、「生活の再確認」の時間

たった2時間。されど2時間。
その短い時間に、ご自身の暮らしの輪郭を取り戻していかれる姿を、私はそばで見守っていました。

猫の顔を見て「よかった、生きててくれて」と微笑まれた表情。
自宅の空気を吸って、少し涙ぐんでおられたこと。
親御さんの入院先で、「これ、ちゃんと届けてきたからね」と声をかけられた優しい声。

限られた時間の中で、「自分の暮らし」と「家族とのつながり」を、もう一度しっかりと握りしめようとしているように見えました。


■ 突然の入院がもたらす、“できないこと”の連鎖

今回、強く感じたのは、長期入院がもたらす現実的な困難です。

・ペットの世話ができない
・日用品や衣類を自分で準備できない
・公共料金や病院代などの支払いに行けない
・親の面倒も見ている人は、自分の入院と同時に家族のケアが止まってしまう

そうした「生活の機能」が突然止まってしまう中、
本人の“行きたい・やりたい”という気持ちをかなえるには、福祉タクシーのような存在が必要不可欠だと実感しました。


■ 一緒に行く、もしくは代わりに行くという支援

今回のように、一時外出に同行することも可能ですし、
ご希望があれば「この支払いをしてきてほしい」「この荷物を届けてほしい」という生活支援の代行も承ることができます。

「お金のことを他人に頼むのは不安」という方もいらっしゃると思います。
ですので、対面で確認しながら一緒に支払いに立ち会う形もできます。
ご本人の意思を大切にしながら、安心して任せていただける方法を一緒に考えていきます。


■ 最後に――“生活の手綱”を離さないでいられるように

「これでやっと一安心。今日は本当にありがとう」

すべての用事を終えて、病院へ戻る道中。
ご本人の表情には疲れがにじんでいましたが、それ以上に“ホッとした”ような安堵の空気が感じられました。

自分のことを自分で決めて、自分で動く。
その機会が「一時外出」というかたちで叶えられた今日、
僕はそのそばで“少しだけ”力になれたのかもしれません。

福祉タクシーむすびは、これからも「行きたい」「やりたい」をあきらめさせない存在でありたいと思っています。

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